「ルンバ」でおなじみのアイロボット(iRobot)社が、破産法の適用を申請したのです。
このニュースを聞いて、「えっ、うちのルンバ使えなくなるの?」「これからどうなるの?」と不安に思った方も多いのではないでしょうか。
実はこれ、単なる「倒産」とは少し事情が異なるようです。
この記事では、なぜアイロボットがこのような事態になったのか、そして私たちユーザーにとって一番気になる「今後のルンバ」について、どこよりも詳しく、分かりやすく解説していきます。
さらに、買収先として名前が挙がっている中国企業「杉川機器人(Picea)」とは一体何者なのか、その正体にも迫ります。
ぜひ最後までお付き合いくださいね。
アイロボット破産?何があった?米国連邦破産法第11条申請の真実
まずは、今回起きた出来事を整理しておきましょう。
2025年12月14日(現地時間)、アメリカのアイロボット社は、デラウェア州の連邦破産裁判所に対し、連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請しました。
「破産」という言葉を聞くと、「会社が消滅してしまうの?」と驚いてしまいますよね。
しかし、アメリカの「チャプター11」は、日本の法律でいうところの「民事再生法」に近い制度なんです。
チャプター11とは?会社はなくなるの?
結論から言うと、アイロボット社がすぐに消滅するわけではありません。
チャプター11は、裁判所の監督下で、事業を継続しながら借金を整理し、会社の立て直し(再建)を目指すための手続きです。
- 事業は継続される:工場の稼働や製品の販売は止まりません。
- 再建を目指す:スポンサーを見つけたり、借金を減らしたりして復活を図ります。
- 今回は「プレパッケージ型」:事前に主要な債権者と話をつけてから申請しているため、手続きがスピーディーに進む予定です。
つまり、今回のニュースは「ルンバ終了のお知らせ」ではなく、「ルンバを存続させるための緊急手術が始まった」と捉えるのが正しいでしょう。
再建完了の目標は2026年2月とされています。
アイロボットが破産した理由はなぜ?中国メーカーの台頭とAmazon買収失敗の背景
では、なぜ「ロボット掃除機のパイオニア」であるアイロボットが、ここまでの窮地に追い込まれてしまったのでしょうか。
その理由は一つではなく、いくつかの大きな要因が重なっています。
主な理由は以下の3点に集約されます。
- 中国メーカーとの価格・技術競争の激化
- Amazonによる買収計画の破談
- 関税やコスト増による財務圧迫
中国メーカーの猛追とシェア転落
かつては「ロボット掃除機=ルンバ」という時代がありましたが、ここ数年で状況は一変しました。
中国のメーカーが、驚くべきスピードで技術力を上げ、シェアを奪っていったのです。
特に以下のメーカーの台頭が著しいです。
| メーカー名 | 特徴と強み |
| Roborock
(ロボロック) | 北京の企業。高性能な水拭き機能や、障害物回避能力の高さで人気急上昇。 |
| Ecovacs
(エコバックス) | 蘇州の企業。モップの自動洗浄機能など、家事の手間を極限まで減らす機能でシェア拡大。 |
| Dreame
(ドリーミー) | 蘇州の企業。強力な吸引力とスタイリッシュなデザイン、AI技術で欧州市場を席巻。 |
アイロボットはカメラを使ったマッピング技術(vSLAM)にこだわってきましたが、中国勢はより高速で正確なレーザーセンサー(LiDAR)を採用。
さらに、「ゴミ収集」だけでなく「モップの洗浄・乾燥」まで全自動で行うドック機能をいち早く搭載し、消費者の心を掴みました。
その結果、2025年のグローバル市場において、アイロボットのシェアはなんと5位圏外にまで転落してしまったと報じられています。
Amazon買収失敗という決定打
アイロボットにとって最大の誤算だったのが、Amazonによる買収計画の失敗です。
2022年、Amazonは約17億ドル(当時のレートで巨額)でアイロボットを買収すると発表しました。
しかし、欧米の規制当局が「Amazonが市場を独占する恐れがある」「ユーザーのプライバシーデータがAmazonに集中しすぎる」として猛反対。
2024年1月、この計画は白紙撤回されました。
この買収を当てにしていたアイロボットは、資金繰りが一気に悪化。
大規模なリストラやCEOの退任を余儀なくされ、体力が奪われていったのです。
既に購入されたルンバはどうなる?アプリや修理サポートへの影響を調査
私たちユーザーにとって最も重要なのは、「今家にあるルンバがどうなるのか」ですよね。
現時点での公式発表や報道を基に、影響をまとめました。
当面はいつも通り使える
安心してください。
アイロボット社は、チャプター11の手続き中も、そして買収完了後も、以下のサービスを継続すると明言しています。
- ルンバ本体の動作:突然動かなくなることはありません。
- スマホアプリ(iRobot Home):遠隔操作やスケジュール設定もそのまま使えます。
- カスタマーサポート:故障時の問い合わせ窓口は維持されます。
- 修理・保証:保証期間内の対応や修理受付も継続されます。
- 消耗品:ブラシやフィルターなどのパーツ供給も止まりません。
ゲイリー・コーエンCEOも声明で、「消費者や顧客に対し、事業を継続できる」と強調しています。
明日急にアプリが消える、といった事態は避けられそうです。
長期的な懸念点は?
ただし、経営母体が変わることで、長期的には変化が起こる可能性もゼロではありません。
例えば、将来的にアプリの仕様が変わったり、製品ラインナップが見直されたりすることは考えられます。
特にユーザーの間で話題になっているのが「データの扱い」です。
これについては後ほど詳しく解説します。
アイロボットを買収した中国企業はどこ?杉川機器人(Picea)の正体と狙い
今回の再建計画のキープレイヤーとなるのが、アイロボットを買収する中国企業です。
その名前は「Shenzhen PICEA Robotics Co., Ltd.(杉川機器人)」。
あまり聞きなれない名前かもしれませんが、実はこの会社、ロボット掃除機業界では知る人ぞ知る「巨人」なのです。
杉川機器人(Picea)とは何者?
Picea(ピセア)は、中国・深センに本社を置く企業です。
主な事業は、自社ブランドでの販売ではなく、他社ブランドの製品を開発・製造する「OEM/ODM」です。
実はこれまでも、アイロボットの製品の製造を請け負っていた主要なパートナー企業でした。
つまり、ルンバの生みの親であるアイロボットが、ルンバを作ってくれていた工場(Picea)に買収されるという構図になったのです。
なぜPiceaが買収するのか?
Piceaはアイロボットに対して、製造費などを含む巨額の債権(借金)を持っていました。
アイロボットがこれ以上支払えない状態になったため、Piceaは借金をチャラにする代わりに、アイロボットの株式を100%取得することを選んだのです。
Piceaにとってのメリットは以下の通りだと推測されます。
- 圧倒的なブランド力の獲得:「ルンバ」という世界一有名なブランドを手に入れることができます。
- 特許技術の取得:アイロボットが長年培ってきたロボット工学の特許技術を自社のものにできます。
- 脱・下請け:製造だけでなく、販売・ブランド展開まで行うグローバル企業へと脱皮を図れます。
アイロボット破産に対するネット上の反応とは?「データ漏洩が怖い」との声も
この衝撃的なニュースに対し、SNSやネット掲示板では様々な反応が飛び交っています。
主な声を要約してご紹介します。
「ありがとうルンバ」感謝と悲しみの声
長年愛用してきたユーザーからは、アイロボットへの感謝や同情の声が多く聞かれました。
「初めて買ったロボット掃除機がルンバだった。家事が楽になって感動したのを覚えてる。」
「ついにここまできたか…一つの時代が終わった感じがして寂しい。」
「うちのルンバは家族みたいなもの。親会社が変わっても元気でいてほしい。」
やはり、日本市場を開拓したパイオニアとしての功績は大きく、愛着を持っている人が多いことが分かります。
「プライバシーは大丈夫?」不安の声が浮き彫りに
一方で、買収先が中国企業であることから、セキュリティ面を懸念する声も非常に多く見られます。
特にルンバはカメラで部屋の間取りを学習するため、そのデータの行方を気にする人が多いようです。
「家の間取りデータが中国企業に渡るのは正直怖い。」
「中国には国家情報法があるから、政府にデータを求められたら拒否できないのでは?」
「あえて中国製を避けてルンバを選んだのに、結局中国企業傘下になるなんて…」
中国の「国家情報法」は、いかなる組織も国の情報活動に協力しなければならないと定めています。
もちろん、現時点でデータが悪用されるという証拠はありませんが、心情的に不安を感じるユーザーがいるのは事実です。
「競争に負けただけ」冷静な分析も
テック系に詳しい層からは、厳しい意見も上がっています。
「性能面で完全に中華メーカーに負けていたから、時間の問題だった。」
「カメラ方式にこだわりすぎて、LiDARへの転換が遅れたのが敗因。」
「Amazon買収がポシャった時点で詰んでいた。」
まとめ:アイロボットとルンバの今後はどうなる?
今回のアイロボット破産と中国企業による買収について、要点をまとめます。
- 状況:アイロボット社は米連邦破産法11条を申請し、再建手続き中。
- 今後:中国の製造パートナー「Picea(杉川機器人)」の完全子会社となり、非公開化される。
- 製品:既存のルンバ、アプリ、サポートは当面の間、問題なく継続される。
- 背景:中国メーカーとの競争激化、Amazon買収失敗、財務悪化が主な原因。
- 懸念:プライバシーデータの扱いについて、一部ユーザーから不安の声が上がっている。
「ルンバ」というブランド自体は残りますが、その中身(経営体制)は大きく変わることになります。
かつてIBMのパソコン事業がLenovo(レノボ)に買収されたように、これからは中国資本の下で、新たな進化を遂げていくのかもしれません。
私たち消費者としては、今後の製品開発やサポート体制、そして何よりプライバシーポリシーの改定などに注視していく必要がありそうです。
【次にあなたができること】
もし現在ルンバをお使いで、アプリの設定やデータのプライバシー設定が気になる方は、一度アプリを開いて「設定」→「プライバシー」の項目を確認してみることをおすすめします。マップデータの共有設定などを見直す良い機会かもしれません。